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法律コラム

代表弁護士の水谷です。
共同親権についての民法改正の報道があってから、ご相談が後を絶ちません。
「すでに共同親権なのか?」というものから(答えはNOで)
「いつ始まるのか?」というもの(後で述べます)、
「今から『共同親権の民法施行後は共同親権にする』と定めたら有効か?」(ちょっとトリッキーなので、解説します)というものまであります。
弊所ブログでも共同親権に関する発信をこれまで続けてきましたが、毎回多くの方に読んでいただいていますので、改めて整理したいと思います。
そもそも「共同親権」はいつ始まるのか?
改正が発表になった=公布された法律が実際に始まることを「施行(せこう)」といいます。
法務省によれば、
令和6年5月31日(令和7年1月最終更新)法務省民事局
「令和6年5月17日、民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)が成立しました(同月24日公布)。」
「この法律は、一部の規定を除き、上記公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日に施行されます。」とあります。
そうすると、特段早まらない限り、公布の日=令和6年5月24日から2年後の令和8年5月24日までには施行されていることになる。
では、実際いつになるのでしょう。
2017年6月2日に「公布から3年以内に施行」と言って公布された債権法は2020年4月1日に施行されており、2018年7月13日に公布された相続法は2019年7月1日、2021年4月28日に公布された相続法は2023年4月1日に公布されています。
つまり、きりの良い日に施行されているのです。
実際の施行日を知らせる「政令」はまだ発表されておらず。
確かなことは言えませんが、例えば「令和8年4月1日に施行します」という発表がある可能性もそれなりにあると思います。
共同親権にしてもらえるのか?
実際に我々弁護士のところに相談に来ている方は、お子さんをめぐって対立している方も少なくありません。
このような場合にも、裁判所は共同親権とすることを認めてくれるのでしょうか。
改正後の民法は、
(離婚又は認知の場合の親権者)民法819条
- 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。
- 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定める。
として、裁判離婚の場合にも「双方」を親権者とすることを認めていますが、「双方」とするべき場合については、7項でこう定めています。
7 裁判所は、第2項まあは前2項の審判(親権者を定め、又はこれを変更する審判)において、次に掲げる場合においては、父母の双方を親権者と定めることができる。この場合において、裁判所は、当該審判をするに当たり次の各号の事情を考慮するものとする。
- 父母の協議で一方を親権者と定めることが困難であり、かつ、双方を親権者と定めることが子の利益に資するものと認められるとき。
- 父母の一方が親権を行うことについて子の意思が確認されており、かつ、その意思に十分配慮することが子の利益に資するものと認められるとき。
- 父母の一方が親権を行うことについて他の一方の同意が得られないことについて正当な理由があると認められるとき。
- その他、前各号に準ずる事情があるとき。
つまり、「協議ではどちらにするか定まらない」だけではなくて、「双方を親権者と定めることが子の利益に資する」とか「子どもの意思に合致する」だけではなくて「そのことが子の福祉に資する」などの事情を要求していて、「争っている」場合をおよそ共同としてくれる定めではないのです。
今、裁判で争っている方はどうなるのか
今、親権をめぐって争っている方が、施行日までに判決が出た場合、裁判所は今の法律にしたがって、どちらかを親権と判決せざるを得ません。
施行日後に判決となった方は、上記の決まりによって共同親権とするかを裁判所が定めるわけです。
とはいえ、はたして施行日の前後で裁判所が異なる判断をするものか…と考えると、消極的に捉えられるようにも思われます。
仮に、施行日の前後で裁判所の判断が変わりうるようなことがあれば、それは当事者の方にとっては大きな違いを生む(平等でない)ということにもなりかねません。
「共同親権の民法施行後は、共同親権にする」と、定めることは有効か?
改正民法は、親権者変更の審判を経れば、すでに成立した離婚についても共同親権とするようにすることを認めています。
改正民法819条8項 第6項の場合
(親権者変更の審判)において、家庭裁判所は、父母の協議により定められた親権者を変更することが子の利益のため必要であるか否かを判断するに当たっては、当該協議の経過、その後の事情の変更その他の事情を考慮するものとする。
この場合において、当該協議の経過を考慮するに当たっては、父母の一方から他の一方への暴力等の有無、家事事件手続法による調停の有無又は裁判外紛争解決手続の利用の有無、協議の結果についての公正証書の作成の有無その他の事情をも勘案するものとする
そもそも、「審判」を経ないと共同親権にはならないので、単に離婚協議書で今「共同親権の民法施行後は共同親権にする」と書いてあってもそれ自体は効力を持ちません。
一方、「当該協議の経過、その後の事情の変更その他の事情」を考慮するものとして、「協議の結果についての公正証書の作成の有無その他の事情を勘案」とあるところからみれば、「のちに共同親権としよう」と二人で定めたことそのものは、確実ではないにしても、今後一定の考慮材料とはなるかもしれません。
現時点での家庭裁判所の調停離婚の現場では、「共同親権施行後には親権者変更の手続きをする」とか「共同にする」とか調停条項に盛り込むことは、許容されていません。
比較的平和裏な協議離婚のカップルなどで、これに近い定めをおくことはあります。
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